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●友情クリニックVol.9:「突然、友だちを亡くしたら?」

親しい友人を亡くして二年たつ。その知らせを受けたのは土曜日の朝だった。私は東京の自宅にいて、他の部屋での用事をすませてリビングルームに入った時、置いてあった携帯電話の留守電にメッセージが入っているのに気がついた。
「千華子が交通事故で亡くなりました」
彼女のお母さんの、何の感情も読み取れない声のメッセージを、私は何度も聞きなおした。あわてて大阪のご実家に電話すると、アメリカのボストン郊外に住んでいた彼女は、現地時間の金曜日、通勤の途中で事故に遭ったらしい。それ以上の詳しいことははっきりしないが、ご両親とお姉さん夫妻がアメリカに向かう準備をしているという、その慌しさが伝わってきた。
私は「私にできることはありませんか」と聞いた。今思うと、こんなに自分勝手な質問もなかっただろう。彼女の家族は、外国からの電話で、まだ三十代の娘が何の前触れも亡くなったと知らされたばかりで、飛行機の手配や親戚との連絡に大わらわだった。私にも何かさせてほしい、と言ったのは私のわがままだ。ご遺族に、そんな私にかまっている余裕があったわけもない。
親しい友だちを失うのは、自分の歴史の大きな一部を喪失することだが、そのときの私は、そんなことに気づいてもいなかった。ただ、何をしたらいいのかわからず、いらだっていた。お互い十八歳で知り合って以来、私が何か言えば興味を持って聞き、助けを求めれば必ず応え、嬉しいことは共に喜び、いやなことには一緒に動揺する、それが当たり前だと思っていた存在がいきなり消えてしまったのに、私にはすることがない。
私はその友だちにいつも「せっかち」だけど「頼りになる」と言われ、「しっかり者」とか「仕切り屋」と呼ばれていたのに、この危機に際して、全くの役立たずなのだった。ボストンからも、ひっきりなしに電話が鳴っているであろう大阪の彼女の実家からも離れた東京にいて、私は何をしていいのかわからず、リビングルームの真ん中で立ったり座ったりしていた。
- [2006/08/30 21:30]
- 糸井恵の「友情クリニック」コラム |
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●友情クリニックVol.8:「アメリカで一番有名なベスト・フレンド――超セレブとの友情の続け方」

オプラ・ウィンフリー(左)と親友のゲイル・キング
友情にまつわる、働く女性の間での大きな関心事のひとつは、友だちへの嫉妬ややっかみとどう付き合うか。友人が仕事で成功したり、大金持ちになったり、ステキな男性と結婚したりすると、友だちとしてはもちろん、心から祝福する。でも、心のどこかに、「いいなあ、あの子ばっかり…」という気持ちが芽生えることもあるだろう。そんなときどうしたらいいのか。
という、永遠の悩み解決のヒントになりそうな特集記事をアメリカの女性向け雑誌、「O」で見つけた。これは「オプラ」の頭文字、テレビの人気司会者にして、総資産14億ドル(1600億円)を誇るスーパー・ビジネスウーマン、オプラ・ウィンフリーの雑誌である。健康に、おしゃれに、人生を充実させようというコンセプトの月刊誌で、美しい写真と、料理、ガーデニング、子育てのアドバイスやチャリティ、ファッション情報などの記事が満載。この雑誌の現在発売中の8月号が、「女の友情」を特集している。その中身は、女性ライターたちが綴る親友の思い出、病死した友だちを看取ることについてのエッセイや、友だちが困っているときの助け方など盛りだくさん。その中で、目玉はオプラとその親友、ゲイル・キングとの、「三十年間の友情を振り返る対談」だ。
なんと言っても、オプラは目もくらむような仕事上の成功と巨万の富を手に入れた超セレブ。多くのチャリティを創設し、巨額の寄付もしている。貧しい家庭の出身であることや、ダイエットを繰り返す姿に好感度も高い。ただの人気者ではなく、現代における最高のアメリカン・ドリームの体現者なのだ。ゲイル・キングとは、二人が二十代の初め、メリーランド州ボルチモアの地方テレビ局で、それぞれ安月給で働いていた時からの親友だという。
- [2006/08/12 17:52]
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●「女友だち」本音インタビュー Vol.7:石田衣良さん「一人の人間をしばり、自分のものにすることは、結婚していようが、友だちだろうが、絶対にできない」


『女友だちの賞味期限』をキーワードに、各界で活躍する方々のインタビューを掲載してきた当ブログ。七回目の今回は、『池袋ウェストゲートパーク』シリーズなどで人気の直木賞作家、石田衣良さんをお迎えしました。四十代の女性の、十七歳年下の男性との運命の恋を描く最新作、『眠れぬ真珠』には、かつて恋愛関係にあった男女の友情の始まり、という興味深いサブテーマも。女性観、友情観を縦横無尽に語っていただいたこのインタビューで、女性が「男友だちにしたい男性」ナンバーワンである石田さんの魅力を、ご堪能ください。
石田さんの小説には、同年代の者同士の友情の力で、いろいろな問題に立ち向かっていくということ、それに、自立した女性が重要なキャラクターとして登場するという二点の特徴があるように思います。
それはありますね。僕は、べたべたしてもたれあうような関係が嫌いで、女性でも自立した強い人が好きですね。男の人にべったりの女性は現実にもしんどいですが、小説のなかで描くのもしんどいんですよ。
いいキャラクターになるのは、誰かに振り回されたり、言いなりになったりせず、意思を持って動いている人。自分の尺度を持って働き、考え、恋をしたり友だちとつきあったりできる人。 そういう人は、「女性はこうしなければ」という考えにある程度しばられながらも、生きていく上でどんどん自由になっていく。現実にはそういう女性、増えていると思いますよ。
小説は疑似体験なので、読者がその世界を味わった後、現実の世界に戻ってくると、こちらの世界が明るく見えるとか、「ああ、よかったな」 と思えるなにかが必要だと思います。それを助ける存在としても、強い女性のキャラクターは力を発揮しますね。
- [2006/07/25 19:04]
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●友だちBOOKSの本棚 Vol.12『対岸の彼女』

文藝春秋
角田光代
★結婚していても、していなくても★
直木賞授賞作。同世代の主婦と働く独身女の友情をテーマにした、「ありそうでなかった小説」として話題になった。思春期まではふつうに築くことができた、互いの存在のなかに入り込みあうような濃密な友情は、なぜ進学、就職、結婚…と人生の駒を進めていく過程で薄まっていくのか。境遇が違う友だちと疎遠になっていくしかないのなら、いったいなんのために人は年をとるのか。その問いに対する答えを、二人の主人公の心の機微を通じて考えさせられる。
小夜子と葵。かたや不機嫌な主婦、かたや零細企業の女社。小夜子が葵の会社で働くことになったことをきっかけに二人は知り合う。じつは二人は元同級生だが、学生時代には接点がなかった。立場も性格もまったく違う二人だが、同い年ということもあって、どこか親近感を感じている。家庭生活が順調とはいえない小夜子と、会社の経営難で苦しい葵。二人は別々の事情で懸命に働きながら、次第に親しさを増していく。と思えば、やっぱり合わないと遠ざかり、そしてまた近づき……。
- [2006/07/13 22:42]
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